【 ⑤おめがシスターズ :30点 】- VTuberは、ぽこピーだけ見てればいい vol.5 -

【 ⑤おめがシスターズ:30点 】
【 活動開始:2018年3月5日 】
【 チャンネル登録者数:28.7万人 】
【 直近再生回数(平均):5.58万回 】


【◆◆長所・視聴するメリット ◆◆】
【①最盛期の動画が高品質で革新的】
【➁高い技術力】
【③気取らない可愛らしさで女性の視聴にも易しい】
【④二人の掛け合いが楽しい。トークスキルはないが見所が多い】
【⑤トレカや最新ハイテク機器等、男性にアプローチするネタが豊富】
【⑥女を捨てたかのような思い切った立ち回り 】

【 ◆◆短所・追う必要がない理由◆◆ 】
【①最盛期に比べて動画の質が悪い】
【➁動画クリエイターとして今後成長する見込みに乏しい】
【③モデルの性能が同格Vより低く、表情や動きに乏しく画が寂しい】
【④笑いやバラエティに関して勉強不足で、コラボ相手を困らせる程トークスキルがない】
【⑤ノリが見切り発車で変顔や大声に頼って落とす。テンプレを延々繰り返す】
【⑥相方のみならず他Vや視聴者、一般人に対しても失礼もしくは攻撃的な振る舞いをする】
【⑦他Vと波長が合わず孤立していてコラボが少ない】
【⑧動画の質を上げる事より直接的な収入を取りに来ている】
【⑨女を捨てたかのような下品な立ち回り 】




【 概要 】
 VTuber界においてかなり特異な立ち位置にいる、女性二人の個人勢ユニット。
ぽこピーより少しだけ後にデビューした古参組だが、ぽこピー以外のV達との関わりを一切絶った状態でチャンネルを育て続ける異端児的な存在。
VTuberはコラボを軸とした横の繋がりが非常に重要で、ぽこピーがここまで大きくなれたのも他のV達と協力し合ったおかげだと思うのだが、おめがシスターズは誰の助けも借りずに今や個人勢VTuber最大手の一角である。

「おめシスと言えば汚い」が広く知られているが、実際は姉でありユニットのブレーンでもあるレイの、
卓越した技術力を用いた画期的な企画でブレイクしている。
クリエイターとしての最盛期から数年経った今も、当時の彼女達を同じ土俵の上で超えているVTuberにはお目にかかれない。
おめシスは技術力を武器に戦うが、盟友であるぽこピーは着ぐるみやパペット等アナログな方向に力を入れて行く様が対照的で面白い。

人気絶頂の最中、ファン達に一切悟られる事なくレイが妊娠・出産を経て実子を動画にて公開するという離れ業をやって退け、業界を騒然とさせる。
もちろんVTuberでは初めての試みで、この上なく革新的である。
おめシス、と言うよりレイはやはり普通じゃないな、と思わされると同時にV界の主流である女性Vの、仕事と実生活の両立について考えさせられる出来事でもあった。

ぽこピーとのコラボは活動初期から非常に多く、本人達曰く「親戚のような関係」だがそこにピーナッツくんが含まれていないのが、見ていてとても辛い。
おめシスの「ピーナッツくんさんってセンスがあってすごい」という、関係性がないからこそ保たれる羨望のような物が失われた近年、二組のコラボ動画は「仲良し女三人組+物言わぬ黄色い背後霊」の構図で仕上がっている。
コメント欄にもその事についてはっきりと言及する物が複数上がってきているので、事故動画が好きな人は覗きに行ってみるといい。

今年1月に上がった、おめシス・ぽこピー・富士葵の三組でグランピングに行く動画の中で、レイとピーナッツくんがペアになって料理をするシーンも結構な事故映像である。動画上ではかわいいキャラクター同士がぎこちない会話をしているだけなのでまだ観ていられるが、実際は双方困り顔の男女が楽しい楽しいレジャー施設であの会話をしていたのだと思うと、共感性羞恥で頭がおかしくなりそうだ。

おめシスとピーナッツくんはどう考えても食い合わせが悪いと思うのだが、ユニット同士で付き合う流れになってしまった以上、ピーナッツくんまでおめシス・ぽんぽこ間の距離で接しなければならず、実際の仲の良さを超えた距離感にお互い戸惑い、どう絡んでいいのか分からなくなっているのだろう。
妹リオなどはたった一回のコラボで富士の運営キクノジョーと、ピーナッツくんよりずっと仲良くなったようである。




【 V業界にも働き方改革
 おめシスの動画クリエイターとしての最盛期は、もう終わっている。
レイの出産数カ月前から企画が十分に練られなくなり、撮影前の準備量が格段に落ちてから動画の質はずっと下り坂である。それが大体2020年の中頃から始まっているので、もう一年以上おめシスは大した動画を出していないし、大きな変化も見せていない。

言うに及ばずこれは活動の根幹部分を一人で担っているレイが子育てに追われているせいだ、と言いたいところだが特
にこの数カ月の動画を観ているとどうしてもそれだけだとは思えない。
一動画当たりの準備量は回を追う毎に減り、下調べが足りないせいでロケに行っては実行不可でなし崩し的にフリートーク、誰かとコラボしている時ですら投げやりな態度を見せるレイは、
動画作りに対して明らかに興味を失っているように見える。

それでも最盛期のあまりにセンセーショナルな動画作りと、相方であるリオとの小気味良い絡みで一定の支持は保てている。
今はその層に対してグッズを販売して不労所得を得る事に重きを置いていて、カードゲームを作ったり生配信で抽選会をやったりしているのが正にそれなのだが、直接的に金をとろうとする動きはYouTube上では嫌われ易い。
長期的に見ると今のように派手に商魂を出すのは得策とは言えないだろう。

レイの、出産にまつわるあれこれは多くの女性VTuber、とりわけ非常時に補佐してくれる事務所のない、個人勢女性Vの前に立ちはだかる難問であり、VTuberにも働き方改革が求められている訳である。
これは私の最推しであるぽこピーにも降りかかる問題であり、その解決は、先の事なんて頭ぽんぽこ!なぽんぽこではなく、ブレーンであるピーナッツくんにかかっているのだが、この件に関してはぽこピーの記事で改めて触れたいと思う。

レイは子育てがひと段落した後以前のような動画作りを出来るようになるのか、という話だが、子供が幼稚園に入園できる3歳を目安にしてもあと1年以上、小学校に入学するタイミングを目安にすると5年程かかる事になる。二人目、三人目があるとすればもっと長い。
その間今のクオリティの動画を出し続け、不労所得を増やす事に主眼を置いて活動し続ければ、レイはクリエイターとして本質的に変わってしまうだろう。
少なくとも、純粋に面白い動画を作る事に全てを注ぐ意識でなくなってしまうのは確かだ。

個人勢のVTuberは個人勢のYouTuberがやっているように、作家や編集のようなメンバーを集めてチームを組む意識を持つべきなのだと思う。
出役もこなせるようなメンバーをチームに組み込んでおくと、レイが出産前後にとったような無理のあるスケジュールを組まなくて済む。
複数名で動画制作に当たるのでブレーンが調子を崩してもチャンネルのクオリティを維持出来る。
今後そういった動きをする個人勢も出ると思うが、自分が調子を崩す前に体制を整える発想が出来なかったのはレイの落ち度と言える。今度はリオの番かも知れないし、今後何かあった時の為にそういった施策をするべきなのだが、目先の金を稼ぐ以外考えられなくなっているようで、残念である。

長い間ぽこピー以外との関わりを絶ってきた事から他のVTuberともどう関わっていいのか分からなくなっているようであり、他Vや、V界自体との相乗効果も望めない。
既に関係の切れていた樋口楓を企画の材料として呼び出し、雑なドッキリを押し付ける様子から、樋口がにじさんじのみならずV界の重鎮のような位置にいる事が全く分かっていないようである。
どんな現場でもなんとでも結果を出してきた樋口を只々困らせてへらへらしている様子は、敬意を欠いていて不躾な上にあまりにもズレていて、絡み辛いVだと言わざるを得ない。
ぽんぽこと仲が良いのも、おめシスの絡み辛さと独善ぶりを気にしないのが業界にぽんぽこ一人しかいない、というだけの話だ。おめシスにとって業界一の友はぽんぽこでも、ぽんぽこからするとそうではない、という点にも言及したい。

VTuberを新しいステージへ導くのは上げている動画や配信の質・革新的な活動の方向性・同業者と人脈を築き、協力し合って大きな仕事を成し遂げる事、等である。
そのどれをも失って収益の為だけに活動を続けるおめシスは、動画クリエイターと言うより既得権益を頼みに収入を得るネットアイドルだ。
今後ファン層が増える事はないだろうし、業界を賑わす事もないだろう。




【 リオ 】
 出産・子育てを経て大きく変化したレイだが、相方であるリオは何も変わらない。レイの私生活が大変な今、代わりに屋台骨を支える事もしない。
リオはあくまでレイの付録、レイに搭載された核弾頭級の主砲に過ぎない。
自発的に動く事はないし、ユニットの方向性に言及する事もない。
仮にレイがVTuberを引退すると言い出したら、リオは何の迷いもなく一緒に業界を去るだろう。
私はそこに主体性の欠如や他力本願な無責任さではなく、ある種のいじらしさと儚さを感じるのだ。

かわいい動物に名前をつける大喜利で男性器の俗称をシャウトする彼女は今、ボケ担当のVTuberとして脂が乗りきっている。


→【 ⑥甲賀流忍者!ぽんぽこ 】に続く

【 ④剣持刀也 :33点 】- VTuberは、ぽこピーだけ見てればいい vol.4 -

【 ④剣持刀也:33点 】
【 活動開始:2018年3月15日 】
【 チャンネル登録者数:52.9万人 】
【 直近再生回数(平均):40.4万回 】




【 概要 】
 業界最大手事務所「にじさんじ」の中堅所筆頭のようなVTuber。バラエティ担当の男性Vとしては、にじさんじでは彼がトップだろう。
にじさんじの大看板と言えば言うに及ばず月ノ美兎だが、彼女と対になっているような文武両道の優等生モデルは、現実の高校でスクールカースト上位に属している男子高校生みたいな雰囲気の彼に、ぴったりである。

にじさんじ、と言うよりVTuberの中でもかなり特異な存在で、持ち前の頭脳を生かして笑い・バラエティのロジックを組み立てようとする立ち回りは、YouTuberと言うよりむしろテレビに出ているような芸人に近い。
複数のVTuberで集まって一つの企画に当たるような場面ではツッコんで良し、回して良し、裏回して良しの大活躍だ。
オフ時に様々な動画を観て研究する事も熱心に行っているようで、その成果は彼の仕事にハッキリと表れている。

多くのVTuberと違い、ちゃんと勉強して偏差値の高い学校に通っていた事が窺える。
PCに弱いのは工業高校・専門学校等、PC系の授業を多く取り入れているような偏差値の低い環境にいなかった事を示しているし、大人だと誰も知らないような知識を豊富に蓄えているのは近年までテスト勉強や受験勉強を頑張っていたからだろう。
彼が何故安泰のレールを外れてこんな業界を志したのかは分からないが、どこに身を置いても前向きに努力出来るのは大した物である。

仕事上ぽんぽこを同期のバカ、ピーナッツくんをキモいストーカーとして腐しているが、二人の中に自分にはない類の強い才能を認めていて、敬意を払っている様子が言動の端々から読み取れる。
直接的なコラボは少ないが、毎年クリスマスに行われるピーナッツくんとのコラボ配信は、V界きっての一大イベントである。

剣持は今大体20代前半だと思うが、大学生と変わらないようなうら若き青年の家に、推定30過ぎにして年齢=彼女いない歴のピーナッツくんがクリスマスの夜に泊まり込んでいる事を思うと、少々背筋が寒くなるようだ。




【 現状 】
 大手事務所の中核を成し、チャンネル登録者数・毎配信の再生回数は共に上々、バラエティ系の企画では見所を量産する剣持だが、正味の話、彼自体は全く面白くない。
精一杯ボケようとしている場面は何度も見るが、気分の悪い毒づきをかますか素人学生並にちょける程度が関の山で、こんな物は若いからギリギリ許されているに過ぎない。
コラボ相手の粗をわざわざ口に出して恥をかかせる事でツッコんだと思っているようだが、それまでの流れもその後の着地も何も考えておらず、相手に対する配慮も
無く、ワードにも手心が加わっていないので、これはマウントの要素を含んだ只の攻撃である。
ネタ切れに迫られて考察やら分析やら諸々喋ってみても、無理くり絞り出しているのでいらない話ばかりだし、論点も結論も何もかもズレている。

彼にはボケ役やクソリプ、コラボ相手が用意した企画のような叩き台が必要で、それを捌いて場を仕切る事でしか能力を発揮出来ない。過去のテレビ番組を引き合いに出して例えるならドリフの長さん、めちゃイケの矢部、はねトび西野亮廣と彼は同質なのだ。
それが単体で画面に映って一人で喋っている状況は、エンタメとして成立し得ない。月ノや、同期の文野のような一人語りの名手と違い、彼は散々蔑んでいるコメント欄にくってかかる事で、全ての配信を何とか乗り切っているのだ。




【 別の道 】
 一人でコメント欄と向かい合うような配信が活動のベースである限り、剣持は長続きしないだろうと思う。攻撃とマウンティングを武器に勢い
で押し通すスタイルは加齢と共に成立しなくなるし、リア充高校生みたいな雰囲気も時間と共に変化して行く。
学生のモデルもあと数年で使えなくなると思うが、彼の場合月ノと違い、「若い」という設定が剥がれると同時に一定数のファンが離脱するだろうと思う。
年下好きのお姉さま方や、聖夜のピーナッツくんのリアル版みたいな男性視聴者にとって、推しは若ければ若い程いいからだ。

こちらから何も発信出来ていない自分の配信はせいぜい視聴者のヒマ潰しぐらいにしかならず、自分は散々見下しているコメント欄の話相手を務めているに過ぎないという事、さらに形態が同じである以上何年続けても同じ作業が続くだけだという事にももう勘付いているだろう。
同じように一人で配信をしている者も、自分からネタやオリジナリティの提供が出来ていれば、ファンが軽く編集して切り抜きにするだけで質のいい動画に仕上がってしまうのだが、剣持の切り抜きで面白い物は常にコラボ相手かコメント欄がネタを提供している。
よくコラボ相手に向けて言う「今日それしか用意してないのか。持たないぞ」というのが彼的に切れ味の鋭い、イケてるツッコみワードな訳だが、彼自身がまともなネタを用意出来たためしがないのは壮大な皮肉である。
もしかしたら彼が口にしたボケの中で一番面白いのはこれかも知れない。

彼発信の爆笑シーン集や、むしろ話が伝わり難くなるような最先端の専門用語を用いて何やら語っているような切り抜きもあるにはあるが、とても見れた物じゃない。強烈なネガキャンになっていて可哀想なので、やっている人は即やめてあげた方がいい。

彼はなまじ頭がいいだけに、単体での配信が主流であるV界の現状に自分が今一つ嚙み合っていない事や、このままだとこの先自分が先細りな事にも薄々勘付いているだろう。5年、10年単位の長期に渡って同じ活動を続けるのは精神的に厳しい。

どこに身を置いても一定の成果は出せる人だと思うので、VTuberをやめて他職で出直す線も大いにある。むしろ私はそうした方が、まだ先の長い彼の人生にとっていいのではないかと思う。
六本木の上場企業でも彼の頭と対人能力があれば職にありつく目があるし、そういう所では攻撃的な態度とマウンティング、若さ由来の勢いが必須能力だ。
オリジナリティやユーモアのセンスに乏しい所も目立たなくなる。ああいう場所の調子のいい会社で働いている連中は、とにかく面白くないのだ。

剣持の抜けた後のV界の穴はどうにでも埋まる。
にじさんじだと社や舞元、ジョー辺りが分担すれば十分だろう。
独特なワードセンスが、とか鋭い切り返しがとか言われているがそんな物は業界から失われてもどこにも何の影響も出ないし、ちょっとしっかりしてるVが頑張ればすぐに近い事が出来てしまう。
オリジナリティやユーモアのセンスを持たない者が努力で身に付けた技術で戦う、というのは言い換えれば誰でも努力次第で追いつけてしまう領域にしか行き得ない、という事なのだ。
抜けたのが月ノだとそうはいかない。誰を何人集めても彼女の代わりは務まらないし、V界どころかサブカル界向こう10年の財産が失われた事になる。




【 宗教家のような先達 】
 剣持が先々までVTuberを続けるなら、単体×手ぶらで人前に立つというベースのフォーマットを何とかしなければ始まらない。
練った企画や、ガチのゲームプレイのようなネタが用意出来ればいいのだが、彼の場合どっちも無理だろう。
ツッコんだり場をコントロールする能力を常時最大限発揮したいなら、月ノやピーナッツくんのように受け身を取らずにボケ続けるタイプの、固定の相方を探した方がいい。事務所内にはまだユニットで活動している者はいないようだが何とでも出来る部分だろうし、実力はあるが埋もれてしまっているにじさんじのライバー、というのも何人もいるだろう。

剣持刀也はVTuberとしては希少価値が低く、将来性に乏しいコモンライバーだ。
単体で活動している姿を追うメリットがないし、数年以内に姿を消す可能性も非常に高い。
努力が出来るタイプの人間なら努力量を跳ね上げて運命を切り開く、という道もあるが、まあお好きにやられたらいいんじゃないですか、という所だろうか。
先天的なセンスや個性を持ち合わせていない人間が、いくら努力しても越えられない壁というのがエンタメ界には存在するのだ。

東大にも余裕で現役合格出来る程の頭脳の持ち主が、1日20時間以上を仕事に充てて20年過ごしても、その壁は超えられない。その生き証人が文中にも登場した西野亮廣である。彼は功績の全てを頭脳と努力、視野の広さとカリスマ性で生み出しているが、内から湧き出る独自のセンスだけはどれだけ求めても手に入れる事が出来なかった。
未だにそれに執着しているし、それがある体を装うので不自然さや歪さが増してしまい、観察眼のある層には根強く叩かれ続けるのだ。
さながら西野亮廣は剣持刀也Lv.100、と言った所だろうか。

しかし文中で剣持君を二度も西野亮廣に例えてしまった事については謝罪をしなければならない。
いくら批評文とは言え、未来ある若者に対して誹謗中傷が過ぎた事を、深くお詫びしたい。
本当に申し訳ございませんでした!


→【 ⑤おめがシスターズ 】に続く

psychopunishermk7.hateblo.jp

 

【VTuberは、ぽこピーだけ見てればいい】③

【 ③朝ノ瑠璃:20点 】
【 活動開始:2018年5月2日 】
【 チャンネル登録者数:17.2万人 】
【 直近再生回数(平均):8558回 】


【 概要 】
 VTuberユニット「朝ノ姉妹」の長女。瑠璃の活動は2018年5月からだが、チャンネル自体はもう少し前からあり、他のチャンネルと比べても古参の部類に入る。
いくつものキャラを高品質で演じ分ける声優としての技量と、磨かれた歌唱力はVTuber界でもトップクラス。
私は彼女が、歌広場さんみたいな彼とコラボして歌ったあのMVが大好きなのだが、歌唱力がズバ抜けている事に加え、オリジナル版の柴咲コウに寄せて歌い切る様は見事の一言だ。身に付けた演技力や表現力が、他のVTuber達と比べても頭一つ抜きん出ている。

2022年1月に妹設定の茜が脱退した事で、現在は瑠璃が1人でチャンネルを回している。瑠璃・茜共にぽこピーと特別相性のいい性格だとは思えないが、コラボ回数は意外と多い。


【 問題点その①:運営が病気 】
 今のVTuber業界の中核を担うのは、2018年初頭にデビューした中堅組である。
それより半年単位、年単位で先行していた者達の多くは勢いを失い、後にデビューした者は埋もれて苦戦を強いられている。
2022年になった今、VTuberは企業に所属しないと基本的に売れない状況である。

同じ中堅所と比べて、「朝ノ姉妹ぷろじぇくと」の現状は悲惨だ。
登録者数が20万人を切っている事はいいとしても、毎動画・配信の再生回数が少な過ぎる。
同格のチャンネルだと再生回数常時5万回は超えていたい所で、3万を下回ると危険信号、1万前後だと早急なテコ入れが必要な状況だが、このチャンネルでは再生回数5000回を下回る事がざらにある。そして現状何のテコ入れも行われていない。
冒頭のMVにしても作画や編集に極めて力を入れ、他事務所のVTuberまで複数引き込んだ力作にも関わらず、再生回数は10万にも届かない。
毎回寄せられるコメントの数を見ても、VTuberのファン達がこのチャンネルに何の期待も寄せていない事が分かる。
メンバーの出入りが相次いで、今とうとう一人になってしまった事と併せ見ても、現状「朝ノ姉妹ぷろじぇくと」は立ち枯れたような状況にある。

このチャンネルが今のような状況に陥ってしまった一番の原因は、運営の質の悪さにある。
動画に度々登場する彼らはどう見ても自分の意志で前に出てきており、朝ノ姉妹を押さえてでも自分が喋りたい、自分がボケたいという姿勢はYouTuberの運営としては最悪である。彼らが絶妙にネット民から好かれないキャラクターである事も痛い。
YouTube上には彼らと全く同じ動きをして叩かれている運営が何人もいるのに、勉強不足なのかそもそも朝ノ姉妹をダシに自分達も認知される魂胆だったのか、どちらにしても運営としては質が悪過ぎる。

朝ノ姉妹は他のVTuberと比べてかなり華のある部類なので、他所で彼女達を見かけてチャンネルを訪れた視聴者も多かったと思うが、運営が姉妹に企画を押し付けている空気があったり、自らしゃしゃり出ている様子を見てさぞ興覚めしただろうと思う。「朝ノ姉妹ぷろじぇくと」はYouTube上のダメなチャンネルのテンプレなのだ。
これでは一線のプロ声優並の演者を用意して、モデルや機材にいくら金をかけても意味がない。

YouTubeチャンネルの運営は、決して自分から前に出てはいけない。
トークスキルやルックスに自信があっても、地元や職場で人気者だったとしても、演者から100%自発的にお願いされて、呼び込まれるまで出てはいけない。
余程必要に迫られない限り、居るか居ないか分からない程影に徹するべきである。
わざわざチャンネルを訪れて動画や配信をクリックする視聴者は、演者に興味を持って来ている。それ以外の人間がリードを奪っている状況を見て喜ぶ筈がない。
大体カメラに映りもしない安全な場所から、都合のいい時だけ茶々を入れて承認欲求を満たそうとする魂胆がクソである。
いくらYouTube視聴者でも、そのくらい嗅ぎ分けて忌避する感性は持っている。

このチャンネルから、演者がやたら逃げて行くのも運営のせいだろうと思う。
「朝ノ姉妹ぷろじぇくと」からは既に三人の演者が去っていて、その度に運営と演者の確執が明るみに出たり、黙って中の人を変えたり揉めた演者の存在を抹消したり、さらにファンから上がった不満の声に対して演者である瑠璃一人に釈明させたり・・不穏な出来事が後を絶たない。瑠璃に自己紹介の際、必ず事務所の名前を言わせるようにしているのも不気味である。
はっきり言ってしまうと瑠璃に付いている運営と、その後ろにある会社はブラックなのだ。
ブラックな会社のDQNな社員だから不手際やクズムーブが止まらず、演者を守る発想自体無く、しかし企業勢なので資金だけは豊富で、それで揃えたハイレベルな演者とモデル、機材と撮影環境のおかげでなんとかチャンネルとしての体は保てている、そんな状況である。


VTuberの運営として模範的なのは、富士葵についている「キクノジョー」だろう。表でも裏でも実力を発揮し、需要があっても極力前に出ず、富士を立てる事に全神経を集中する様子は運営の鏡である。
しかし富士のチャンネルは運営の仕事が至れり尽くせりで、富士自ら努力する姿を見せきれていない事で伸び悩んでいる。
つまりキクノジョーの手厚い仕事と富士を大事に思う気持ちが、かえって富士の首を絞めている状態で、VTuber活動における運営と演者の関係というのは難しい物だと思わされる。
ぽこピーのように運営と演者を兼ねているVTuberはこの辺の問題を最初からクリア出来る訳だが、代わりに両方の仕事を同時にこなすモチベーションと技量が必要となり、やはり簡単にはいかない。


【 問題点その➁:瑠璃がリア充
 VTuberが成功する為に必要な素養に順位を付けるとするなら「①声や性格・趣味嗜好、トークスキルや笑いのセンスを含めた演者自身、➁チャンネルの方向性・企画の質、③高い編集スキルや美麗なモデル・質のいい機材」となる。
①と➁が揃っていれば③については素人の作った2Dモデルでも、何なら動かない一枚絵でも視聴者は付いて来るし、①が無くて➁がブレていて、③だけ揃っていても人気は出ない。面白くないし回数も回っていないのにガワだけがいい、哀しい動画がチャンネルに並ぶ事になる。
ちなみに①より重要な⓪というのもあって、それは「⓪このご時世、そもそも企業に入っていなければ①~③が揃っていても誰も観ない」である。

「朝ノ姉妹ぷろじぇくと」の場合③は申し分ない。
➁については主に運営の質が悪い為ダメである。
①の瑠璃自身どうか、という点は難しい所だ。

ネット民の多くは、リアルではパッとしない日陰者である。
その傾向が特に強いVTuberの視聴者には演者の、「ガチのオタクである」「プライベートでは陰キャのコミュ障である」「家族と仲が良い」のような素朴かつ非リアな設定が強く刺さる。

配信等で瑠璃が見せる素のキャラは、少々チャラめのリア充である。離職率が高く平均年齢の低い、例えば全国でチェーン展開している大手居酒屋の若手社員のような語り口は、現実社会でそういう人達に圧迫されて来たネット民達から共感を得られず、主に自分を大きく見せる為に、表面だけ格好よく整えられたトークスタイルは薄っぺらで奥行きがなく、笑い所も何もない。
まだ口にしている所を見た事はないが、きっと彼女は家族、仲間、夢、愛みたいな言葉が大好きだろう。

そういうスタイルが悪いとは言わない。
VTuberのファンの中にも、少数だとしてもそういう類の人達はいて、そういったニッチな層を狙うのは戦術としてありだからだ。
KMNZやMZMはそういった層に働きかけて成功した例だと思うが、彼らもトークは全く上手くない。そして動画や配信毎の再生回数に相当なムラがあって、不安定な状況だ。
彼らはにじさんじの一線所のライバーのように配信で一人語りをしても視聴者の反応が良くない事を身をもって知っていて、代わりに歌メインの配信や動画の企画に拘る事で結果を出している。私は彼らのチャンネルのコンテンツなんか一回も観た事がないが、それでも自分の強みを分析して、そこを押す事で結果に繋げようとする姿勢は素晴らしい


瑠璃、もしくはチャンネルの運営は、瑠璃のトーク企画への視聴者の反応が極めて悪い事を分かっていながらチャンネルの方向性を改めようとしない。
演者の長所を生かせて、尚且つモチベーションも保てる企画の中で、ウケのよかった物を擦っていく、というYouTubeでの活動の基本を、瑠璃はVTuberの先行組でありながら全く分かっていないように見える。
彼女は出役として技術を磨く努力は人一倍しているが、状況を客観視するとか先々を見据えて長期的な戦略を練る、といった事は全く出来ない。
だからこそ運営が上手く舵取りしてやるべきなのだが、彼らは瑠璃を利用する事しか考えておらず、救いがない。
彼女は付いていく相手と身を置く場所を間違えたまま、出役にとってかけがえのない若い期間の全てを、今終えようとしている。


【 AAA 】
挑戦して芽が出なかった時は即撤退、即仕切り直しが鉄則である。
一発目の挑戦で当たりを引けなかった者はこれこそ、という手応えを感じるまで、
この手順を繰り返すしかない。
当たりを引くまで何年もかかるかも知れないし、一生かかっても無理かも知れない。それでもハズレと分かっている場所に、いつまでも居座っていても仕方がないのだ。
仲間だった三人はすでに出発している。瑠璃がどうするかは彼女次第だ。

いっその事事務所を蹴ってコーサカにでも泣きついて、ついでにKMNZも巻き込んでAAAみたいなフリーのグループでも作ればいいのだ。
私には誰が誰だか分からないし、おすすめに出てきたら即表示されないようにするが、長所が生きて短所は隠れ、よりウケ易い若者にアプローチ出来るし、何より好きな仲間達とわいわいやれて精神衛生的にもいいのではないだろうか。
適当に喋っている割には結構いい案だと我ながら思う。
問題はMZMやKMNZに、瑠璃と仕事をして得られるメリットが特にない、という所だろうか。


私は朝ノ瑠璃に何の思い入れもないし、話を聞いていて一回も面白いと思った事がないが、それでもはっきりとした志を持って明確に努力した若者が、ゴミみたいな大人に将来を奪われるのは、さすがに見ていて胸糞なのだ。
「朝ノ姉妹ぷろじぇくと」運営のリーダーはチャンネルの惨状を尻目に、今Twitterで自分のアバターがデザインされたグッズの購入を、あろう事か自分が担当するVTuberのファン達に呼び掛けている。多分人気テレビ番組の名物ディレクターみたいな位置を狙っているのだろう。
思うにこいつは、良識とか羞恥心の類を親の腹に忘れて来たタイプ
の、本物のクズである。

今思えばピーナッツくんが何となく口にしていた、「再生回数3、
4万回で細々やろう」「茜ちゃんは自給700円のバイトみたいにやる気のない顔してた」「人がキレる、ブラックな環境に慣れてるの?」という言葉は、全て朝ノ姉妹にぶっ刺さっていたのだ。
彼は今30過ぎぐらいだと思うが、年齢に見合わない、おっさん臭い無神経さが止まらない。細かい事故を割とたくさん起こしているので、追っていると結構楽しめるだろう。


→【 ④剣持刀也 】に続く

【VTuberは、ぽこピーだけ見てればいい】②

【 ➁ 月ノ美兎:88点 】
【 活動開始:2018年2月8日 】
【 チャンネル登録者数:81万人 】
【 直近再生回数(平均):21.6万回 】


【 概要 】
 VTuber事務所の最大手「にじさんじ」の顔とも言える超大型VTuber
広い人脈を築いていて、どこ所属の何系VTuberを推していても彼女には必ず行き当たる。
優しく真っ当な人格、同業者すら感化させるカリスマ性にリーダーとしての器、常識的な感性、狂気じみた笑いのセンス、業界いちの配信技術・トークスキル等ありとあらゆる物を備えている怪物。
ぽこピーとは初期から付き合いがあるが直接的なコラボの回数は少なく、「ぽんぽこ24」という24時間耐久配信で絡むのが主である。

ぽんぽこを可愛い妹(の一人)、ピーナッツくんを絡み辛くて面倒臭い奴と捉えていて、二人の扱いには結構な差がある。


【 業界の牽引者へ 】
 VTuber界隈の最大組織「にじさんじ」と言えど、所属するVTuberの現状には結構な差がある。
上手くいっていない例だと古参でありながら登録者数は10万人、配信の再生回数は毎回1万回前後、と言った具合だろうか。
月ノの登録者数81万、毎配信20万再生前後、というのは他のVTuberと一線を画す数字である。数字上彼女クラス、もしくはそれ以上を記録している者は皆他とは別格で、ずば抜けた何かを持っている。

 月ノの活動は主に配信だが、相方も居ない、叩き台もない状態で二塁打三塁打級のボケを延々量産する様子を見ていると、こいつには誰も勝てないな、と思う。
私の最推しは「ぽこピー」だが、配信ではどちらも彼女の足元にも及ばない。
こと配信という舞台の上で延々と一人芝居を続けるスタミナが、他の者より圧倒的に多い。ザラついた声に少々悪い活舌、垢抜けない雰囲気が絶妙なハズしになっていて、親しみ易さも申し分ない。

 あらゆる適正を兼ね備え、様々な運に恵まれた特別な存在、というのがどの業界にも一人はいる。VTuber界隈だと彼女がそうで、中の人はこの仕事に就くために生まれて来たのだ。
若さや一時的な中毒性を売りにしていない事から、10年単位の長期的な目で見ても先々までこれ一本で食っていけるだろう。女子高生という設定は使えなくなるが、彼女の場合特に影響はない筈だ。

人気商売は先行逃げ切りが必勝パターンだが、VTuber界の最古参は一人、また一人と姿を消しつつある。
実力・人脈・人気から見て、キズナアイの引退後は彼女の時代である。
VTuberの数自体が飽和状態となって久しい昨今、彼女の牽引する業界のこの先がどのように形作られていくのか、私はとても興味がある。


【 対象年齢 】
ちなみに私は彼女の事が全く好きではない。
立場をいい事に時折見せる横柄で攻撃的な態度や、自分一人で楽しくなってキャンキャンはしゃいでいる様子は若い陰キャ女子特有の痛さにまみれていて、とても見ていられない。
わざとらしく落ち着いた調子で早口にボケ続ける様子も「わたくし冷静なまま狂ってるんですの、面白いでございましょう?イケてるでございましょう?」という自己陶酔が透けて見えて鬱陶しい。これは中二病の変化形とでも言うべきあるあるスタイルで、やはり大学生ぐらいまでの陰キャ特有である。

後輩の女性VTuber達と百合的な関係を作るのが上手い事や、下ネタに執着する事もそうだが、やっている事が全体的に若年層向けなのだ。おまけにいちいち古臭い。
対象は昔の流行を知らないせいぜい20代中盤以下の若者、というところだろうか。30代以降のまともな大人の視聴に耐える物ではないし、それ以上の年齢であるにも関わらず彼女に心底入れ込んでいる視聴者は、一度自分の人生これでいいのか、と冷静に考えてみる事をお勧めする。

YouTube自体若者向けのプラットフォームのイメージがあるが、多数派である低品質なコンテンツがせいぜい若者ぐらいしか騙せない、というだけの話で、全世代の視聴に耐えるコンテンツというのは普通に強い。
月ノの数少ない、今後の課題と言う所だろうか。


→【 ③朝ノ瑠璃 】に続く

【VTuberは、ぽこピーだけ見てればいい】

【変態の国の、おかしな文化】

 日本は、気色の悪い国だと思う。
生み出すコンテンツは世界のどの国と比べてもなよなよ、ジメジメとして異質。
漫画・アニメはその代表的な例だと思うが、登場人物が頬を染め、天を仰いで咆哮しつつ寒天状の涙を絞り出す描写などは、常軌を逸している。
それを最初に作ったのが今年81のおじいちゃんクリエイターだと言うからいよいよ訳が分からない。

そんな変態の国日本が近々に生み出したのが、「VTuber」なる物である。
YouTuber自体、おじさん達には受け入れ難い存在なのにそのアニメキャラ版、となるといよいよ異世界である。
彼らは一体何を目的に活動している、どういった趣旨の存在なのだろう。
今回は、今業界で最も勢いのある「ぽこピー」を中心に、その周囲を彩るVtuber達について批評していきたいと思う。

 

【① 富士 葵:61点】
【チャンネル登録者数:33.2万人】
【直近再生回数(平均):1.8万回】

【 概要 】 
 富士葵は、VTuberユニット「ぽこピー」の盟友の一人で、VTuberの中ではかなりの古株になる。裏方・出役どちらとしても優秀な「キクノジョー」を相方に、万全な環境で活動する温室育ちのVTuberと言えるだろう。

ぽこピーとのコラボの際は、富士・キクノジョー共にぽんぽこよりもピーナッツくんに興味を示し、立てるというVTuberの中でも非常に珍しい立ち回りを見せる。
これは二人の知的好奇心・文化レベルが高く、「面倒だし、ややこしいけど奥が深い物」をより好む性格をしているせいだろうと思う。
大抵のVTuber(特に女性)はピーナッツくんを、「ぽんぽこにコラボ依頼すると付いてくる、なんか面倒臭い奴」ぐらいにしか思っておらず、彼は誰とコラボをしても結構酷い仕打ちを受けるのだ。

思いがけず持ち上げられると内弁慶を発動してしまい、富士・キクノジョーに対して上から絡んでしまうツンデレぶりは、ピーナッツくんの新しい萌えポイントだろう。
富士にデレ過ぎてうざいパパのようにあしらわれても、「葵ちゃ~ん、もっとお話しようよぉ~」とキモオタのように追いすがるぽんぽこも新鮮だ。
ぽこピー×富士のコラボは他のどのVTuberとのコラボとも違う、和やかな雰囲気と強い相乗効果を生んでいて、私はこれが一番いい組み合わせなんじゃないかと思っている。

どのくらい認識されているか分からないが、キクノジョーという運営は本当に有能だと思う。大企業の後ろ盾があるにしても動画の編集能力が凄まじく、用意する企画は流行を押さえつつ繊細でポップ。富士を最大限引き立てる事に留意しつつ、常に一歩下がってお膳立てする姿勢は運営の模範例である。
ガッチマンに近いような飄々とした、ネット民に一番受けるタイプのキャラクターは富士ファンの気持ちを逆撫でず、なかなかの美声で器用に立ち回り、汚れ役・腐され役だって喜んで引き受ける。彼が安っぽくて変なモデルを延々使い続けるのも、その方が富士が引き立つし、視聴者の勘に触らないからである。
話術や、笑いに関してもその辺のVTuberなんかよりよほどレベルが高くて、もうあんたが単体でVTuberやればいいじゃん、と言いたくなってしまう。

後述する朝ノ瑠璃が、彼レベルの運営を引き当てていれば、と考えると無念でならない。後ろに付いて補佐する運営のおかげで生かされるVTuberもいれば、殺されるVTuberもいるのだ。


【 近況 】
 最初のVTuberが誕生したのは2016年末頃で、今の古株・中堅所(ぽこピーを含む)が団子になってデビューしたのが2018年初頭なので、2017年末にデビューした富士はVTuberの中で先行組の部類に入る。

人気商売は「先行逃げ切り」が鉄板の必勝法である。
大企業をバックにつけた企業勢であり、優秀な運営に高価な機材、整った撮影環境等、活動に必要な物は十二分に当てがわれている。
実家の自室で低スペックなPCを用いて活動するVTuberもいる中で、かなり恵まれた環境にいると言えるだろう。

しかし最近の富士はどう見ても下がり調子である。
チャンネル登録者数はVTuberの中ではやや多い方だが、それに対してあまりに少ない再生回数を見ると、「先行してて、しかも企業に入っているのにこの程度」と言わざるを得ない。
チャンネル登録者数20万人代でも一動画の再生数が5万回を下回ったら調子がいいとは言えない。3万回が大体ギリギリのラインだが、富士の最近の動画・配信は悪いと1万回を下回ってしまう。


【 問題点・課題 】
 富士の売りは若くあどけない可愛らしさと清潔感に溢れたキャラクター、そしてVTuberの中で抜きん出て真っ当で、筋の通った人格である。
これに前述のアドバンテージが足されているなら無敵じゃないか、と思うかも知れないが、彼女の戦場はYouTube。下品で浅薄、分かり易いネタが再生回数を稼ぐ世界である。悪く言えば、彼女は多くの視聴者にとって「つまらない存在」なのだ。

一見引きのある企画やトークも、ボケも突っ込みもしない彼女の立ち回りだと一向にハネない。動画や配信の中では只々可愛い女の子の一人喋りが続くが、富士と同等以上に魅力的で、唯一無二の特性を備えたVTuberは日々生まれ続けている。
それだけでは到底生き残れない。

足りないのは彼女自身のプライベートや素の部分をさらけ出してネタにする事だと思うが、運営が彼女を非常に大事に扱っていて、そういった企画が組まれる事は基本的にない。富士自身もチャンネルを少しでも大きくしたい、もっと上に行くには何が足りないかな、と試行錯誤する事をしない。
何故なら彼女は今の活動をあと数年繰り返した後、業界を引退するつもりだからである。

例えば彼女の盟友「ぽこピー」は、この業界に骨を埋める想定で活動している。
どちらも正反対にベクトルの向いた社会不適合者で、ここ以上に自分を生かせる場所はない。他のVTuberのように「声優として売れるまでの繋ぎ」とか「若い間だけアイドル的に活動して、後は結婚」といった逃げ道がないので、動画を面白くする事・チャンネルを伸ばす事に二人で全集中していて、それが今の勢いに繋がっている。

彼らのチャンネルに上がっている動画で、再生回数の回っている物は全部二人の性格や日常生活の素の部分をネタにして作られた物だ。
対して富士の配信や動画は流行りのコンテンツやキクノジョーさえいれば他のVTuberでも出来るような企画をネタにしていて、富士独自の個性があまり反映されていない。
これが二つのチャンネルの明暗を分ける大きな要因だろう。

VTuber、ひいてはYouTuberは本人が動いてなんぼである。
自分の性格や趣味を反映して、あのYouTuberみたいになりたい、あの動画のあの技術を取り入れたい、トークスキルを伸ばして登録者数は何年以内に何万人目指して・・みたいな目標に向かって本人が目一杯動いていないと、視聴者が後を追ってくれない。
運営にあれこれ用意して貰って、現場で仕事をしたら後はプライベート、というのはどちらかと言うと芸能人のスタンスである。


【 今後 】
 富士はVTuberと言うより、3Dモデルを被ったマイナーアイドルだ。
若い間だけファンの前で歌って踊って、適齢期が来たら男を見つけて引退してしまう。
彼女の目標は「より多くのシングルを出す事、より大きな舞台で歌う事」であり、そういう意識で仕事をして、本筋のVTuberYouTube上で押し負けるのは当たり前の事なのだ。
彼女の主戦場はYouTubeで、そこでより大きな存在となる事でさらに大きな舞台に立つ事が出来る、という基本構造を彼女自身意識出来ていない気がするが、最初からそこまで上を見ていないのか、天然で分かっていないのかはキクノジョーぐらいにしか分からない。

私が彼女に望むのは、「引退までの数年間に、少しでも多くぽこピーとコラボをして欲しい」という事と、「キクノジョーの素晴らしさを事務所に訴え、彼をバックにつけた別のVTuberをデビューさせるよう強く進言して欲しい」という事ぐらいである。


→【➁月ノ美兎】に続く

【ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結】81点

【始まるDC侵攻計画】

 本作は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2014)」で有名なジェームズ・ガンが手掛けた、DCEU(DCコミックス原作の映画作品群)の最新作だ。
前作の作風を一新し、「ガーディアンズ」っぽさ満載の、明るくポップで、ナンセンスなギャグに溢れた娯楽超大作となっている。

アメコミの映画化に関して、今ハリウッドでジェームズ・ガンの右に出る者はいない。
彼は世界のオタク達が何をしたら喜ぶか、よく心得ている。
今最も勢いのあるアメコミ映画の専門家をDCEUが、あろう事かライバルであるMCU(マーベルコミックスを原作とする映画作品群)から呼び寄せて製作されたのが本作である。
これはDCEUの、MCUに対する事実上の敗北宣言と受け取っていいのではないだろうか。

前作からテイストを一新して「ガーディアンズ」に寄せ、MCUから持ち込まれたキャストで構成された本作はさながらMCUの、DCEUにおける植民地・侵略の足掛かりである。
作中、前作から僅かに引き継がれたキャラクター達の出番を次々と奪って行く展開に、「スーサイドシリーズは俺の物にするから」という監督の意思が表れているようだ。
序盤の、主に前作から引き継いだキャラで構成されているチームが作戦開始と同時に壊滅し、監督がMCUから連れて来た役者の率いるチームが生き残って物語の主軸となる流れなどは、今考えると笑ってしまう。

看板キャラハーレイ・クインにしても、本作では本筋のストーリー上で重要な役割を何一つ担っていない。活躍シーンは多いが、その全てのシーンと彼女の存在を丸ごと本作からカットしても、ストーリー的には何の破綻も起きない。
本作の主人公はブラッドスポートだし、ヒロインはラットキャッチャーで、彼らの父娘的な関係が物語の軸である。

最近売れ始めている、ピースメイカー演じるジョン・シナは、本当にいい仕事をする。
近年ハリウッド映画でよく見る「強くて有能、知恵もあって表面的には完璧だが、根本的に思い上がっていて、人として間違っている白人の悪役」が綺麗にハマる。
前文内の鍵括弧で括った特徴は、今アメリカ国民が自国に対して抱いているイメージで、ピースメイカーは「近年までの、間違ったアメリカ」の象徴として作られたキャラである。

自国の利益の為に他国を侵略・利用し、不都合な事実は破壊して隠蔽。
その邪魔をする者は誰であっても殺害して闇に葬り、結果世界に平和をもたらす。
作中あるキャラが彼に向けて言う「ピースメイカー(平和をもたらす者)とは、笑わせるぜ」というセリフは、監督の、自国に向けた抗議である。
立ち向かう主人公が黒人、というのも非常に示唆的だ。
娯楽作としてハイレベルに仕上げた上に、考察出来るような裏テーマやメッセージ性まで含ませる高度な映画作りは、映画の都ハリウッドと言えど並みの監督には出来ない。

序盤が少しもたつくものの、DCEUではこれが一番完成度の高い作品だろう。
弐瓶勉作品のような装いをした主人公に、星のカービィの敵キャラを思わせるカイジュウ、カラフルでポップな特殊効果等、どことなく日本人の琴線に触れる要素も多い本作。おすすめである。

【千と千尋の神隠し】69点

宮崎駿、下降の第一歩】

「好きなジブリ作品は?」と尋ねて返って来るタイトルは、大抵その人が10代の前半に観て感銘を受けた物である。
現在40前後の人だと「天空の城ラピュタ」、30代半ばだと「もののけ姫」、20代だと「ハウルの動く城」といった所だろうか。
ジブリ作品、とりわけ宮崎駿の監督作品は「千と千尋」以降どんどんクオリティを落としていると思うが、人間単純な物で、一番感受性の強い時に観た物が一番面白い物として刷り込まれてしまうのだろう。

ちなみに冒頭の質問は回答者の性格占いのような使い方も出来て、「となりのトトロ」と答える人は、多分それと「千と千尋」ぐらいしか観ていないし、「紅の豚」や「平成狸合戦ぽんぽこ」を挙げる人は創作物の妙を読み取る通な人、「火垂るの墓」と答える人は精神破綻寸前、ステージ4のメンヘラである。
百発百中なので、合コン等で試してみて欲しい。

冗談はさておき、冒頭の質問に「ジブリ作品はひとつも観ていない」と答える人は悪い意味で特殊な育ちをしている事が多く、激しく空気が読めず周りに度々迷惑をかける人や、メンヘラ気質の人が多いというのは本当にあると思う。
こちらは本当に確かだと思うので、もしそんな人に出会う事があれば意識してみて欲しい。

冗談はこのへんにして、「千と千尋の神隠し」は、宮崎監督が脚本のストーリー部分を整合性やリアリティ、流れの自然さの意味で突き詰めなくなり、いつもどこか破綻している作品を作るようになった、その第一作目である。
ひとつ前の監督作は「もののけ姫」になるが、ここまで担当した作品はどれも、普遍的なメッセージを内包し、整合性を詰め、キャラクターの心の動きや関係性の構築、ストーリー展開のスピードや間、その全てが自然かつ完璧なバランスで成り立っていた。
千と千尋」以降、彼の作品は回を追う毎にこれらを保てなくなって行く。

人によっては「年を取って耄碌(もうろく)したから」と言うだろう。
それも多分にありそうだが、それ以上に彼は「もののけ姫」までの作品群で自分の表現したい物を全部出しきってしまったのだと思う。
若い頃から頭に湧いて止まらない、現実とかけ離れた世界。
いる筈のない生き物、現実世界の誰よりも素晴らしい主人公、それを引き立てる醜い悪役。世の中への怒り、これまでの人生で培ったコンプレックス。

クリエイターは、そういった自分の中に渦巻く澱を、作品にぶつける事で物作りをする訳だが、ある程度放出すると、大抵の者が勢いを失ってしまい、考えながら、絞り出すように作品を作るようになる。
要するにクリエイターのアイディアや情熱は有限で、人によって差はあれど、一定量を放出してしまうとそれ以降の作品は大きく(大抵は悪い意味で)形を変えてしまう、という事だ。

問題点を分かり易い方から挙げていくと、「千と千尋の神隠し」は脚本の組み方がかなり雑で、不自然且つ無理矢理な展開が目立つ。
序盤「となりのトトロ」的に新しい街に主人公家族を放り込んで、IQの低い両親が謎の行動力で無理矢理主人公を異世界に引っ張り込み、面倒だから出しちまえ、と雑に彼氏役を投入し、その後の展開やセリフも逐一無理矢理で取って付けたような物ばかりである。
どうしてその流れになったのか段階的に描写しなければ没入感は削がれてしまうし、キャラのセリフや関係性も、いちいちフリや切っ掛けを作らなければ実質的には成立しないのだ。
本作はそれを全体的に怠っている。
視聴に耐えられない程ではないが、「もののけ姫」までの宮崎作品と比べると雲泥の差がある。
ピンと来ない人は、主人公が電車から降りる~エンドロールまでの流れをもう一度見直してみるといい。それまでに説明できていなかった要素や宙に浮いているキャラを、口先のセリフだけで手短に片づけ、モブを含めた全キャラクターが情緒不安定で変なセリフを口にする。そして何かを示す訳でも、物語に落ちをつける訳でも意外性を持たせる訳でもない、フワっとしたエンディングに繋がる。

宮崎監督はスマホのような新しい物を嫌ったり、「子供は昔ながらの環境で育てるべき」といった思想を持っているタイプの、度の強い懐古主義者で、本作の「小さな女の子を、レトロで趣のある仕事場で、昔ながらのスタイルで働かせる話が作りたい」という大元の発想には、それがよく表れている。
そこに自身の心象風景や、「現実、かくあるべき」みたいな理想を反映したシーンをたっぷり盛り込んでいて、面倒な年寄りの煩わしい説教や、癖(へき)をしつこく押し付けられている感が否めない。
次作以降増々強まって鑑賞に支障を来すレベルにまでなるこの傾向は、本作では強力な作画、細部までこだわって作り込まれた世界感で何とかスルー出来るかな、というところだ。

「ストーリー、整合性、メッセージ性」はもちろん映画の肝だと思うが、それらを欠いていても映像美や世界観の作り込み、一つ一つの描写に力を込めれば、人を沸かせる、価値ある一本として成り立たせる事が出来る、というのはアニメ映画の面白い所だと思う。
2021年の細田監督作品「竜とそばかすの姫」はストーリーや整合性、リアリティ等何もかもが崩壊していて、見るに堪えない本当に酷い作品だと思うが、監督入魂のバーチャル世界の作り込み、楽曲部分の素晴らしさで何とか一定の価値は保てている。
千と千尋の神隠し」と「竜とそばかすの姫」はレベルは違えど、作品としての価値の出し方、映画としての成り立ちは奇しくも同じ、と言えるだろう。
ついでに言うなら「竜とそばかす」は「千と千尋」から結構色んな要素をパクっていて、共通点を探すのも面白い。

千と千尋の神隠し」は大人が観ると色々引っかかるが、子供や、表面的な描写が盛られているだけで楽しくなれちゃうタイプの大人には申し分ない一本だ。私も前述したような粗に逐一引っかかりながらも、全体的に楽しく鑑賞させて貰った。
しかし「これがジブリ作品・宮崎作品の、20年に渡る迷走の序章だ」という前提の下鑑賞すると、また違った味わい方ができる。
昨今の「セカイ系アニメ」なるジャンルが芯を食わない作品を産出し続けている様子を見ても、宮崎駿を源流とするアニメ流派は、もうどん詰まりに来ているのだと思う。
ローションみたいな粘っこい涙や、テカテカの食物をジュルジュルすする描写を描かないタイプの、新しいアニメ畑の天才の登場が、待ち遠しくてならない。